タケル君(8歳齢、去勢雄、柴犬)の小腸に見つかったT細胞性大細胞性リンパ腫。非常に悪性度が高いリンパ腫で、かなり手強い相手です。様々な治療を組み合わせても、長期生存は通常なかなか…
今回は、定期的な健康診断時に見つかった軽度な非再生性貧血(Ht=33%)が精密検査に進むきっかけとなりました。各種精密検査の結果、タケル君の小腸にでき物が見つかり、それが貧血の原因であることが分かりました。その時のタケル君はいたって元気で、下痢や嘔吐などの症状もありません。その後、日本小動物医療センターとのコラボで、消化管のできものは無事摘出されましたが、その結果は、なんとT細胞性大細胞性消化器型リンパ腫。通常は手術だけでなんとかなる病気ではありません。元気なタケル君に悪性度の高いがんが見つかってしまうなんて、ご家族にとっては寝耳に水。ご家族はタケル君のことを我が子の様に可愛がっており、できることなら何でもしてあげたいと。今回はがんが早期に発見された強みを活かし、徹底的に闘う治療プランを考案しました。
抜糸後すぐに、ロムスチンを主体とした化学療法を開始しました。ロムスチンは、骨髄抑制以外の副作用が少ないのが特徴ですが、その分、骨髄抑制は最も強い化学療法剤のひとつです。特に投与後5〜7日目に白血球数が基準値を大きく下回ることもあり、薬用量の設定や併用薬の処方にとても気を遣います。でも、タケル君の頑張り、そしてなによりも、ご家族が体温、心拍数、呼吸数を毎日2回、欠かさず計測してくれたことも手伝って(自宅入院と呼んでいます)、合計12回の化学療法中、タケル君が化学療法の副作用で苦しむことはありませんでした。化学療法完了後も毎月欠かさず画像検診をしていますが、手術から現在まで約17カ月間、リンパ腫の局所再発や転移もなく、タケル君は日々元気に過ごしています。